嘘をついても許される状況とは?
嘘も方便
項リスト(更新順)
お母さんが死んだことを遠隔の弟に知らせる(5) 全てが丸く納まるとき(3) 人命がかかっているとき(1) 自作自演(2) 一人で壁に向かって言ったとき(1) 末期で助からない(1) 飼ってた小鳥が猫に食われた時(1)
お母さんが死んだことを遠隔の弟に知らせる(5) 全てが丸く納まるとき(3) 人命がかかっているとき(1) 自作自演(2) 一人で壁に向かって言ったとき(1) 末期で助からない(1) 飼ってた小鳥が猫に食われた時(1)
が、なぜ木に登るのかは俺も分からない……。
「あ、姉さん。ぼくだよ。それよりキティは元気かい?」
家に残してきた愛猫の様子が知りたかったらしい。
「あ、あんたの猫ね。こないだ死んじゃったわ。近所の酔っ払いの車に轢かれてね」
受話器の向こうで弟は絶句し、やがて「思いやりがない」と非難した。
「そういう時は…姉さんだってぼくがキティを可愛がっていたの、知ってたんだから…嘘でもいいからこう言うんだよ。『キティは昨日、木に登ったのよ』って」「なによそれ。人の話、聞いてる?。あんたの猫は酔っ払いの…」
「黙っててよ。そしたらぼくが、『え、それでどうしたの』とたずねるだろ。そしたら『みんなで助けようとしたけど、自分でどんどん上の方に登ったのよ』って言うんだよ」「…」
「そう聞いたら僕にだって心の準備ができるだろ。で『それからどうなったの』と聞かれたら『かわいそうだったけど、木から落ちてしまったんだよ』って言うんだ。そしたら僕だってひどいショックを受けなくて済むじゃないか」「…わかったわよ。これからは気をつけるわよ…」
「…いいよ、もう。…それより、母さんは元気?」「母さん? ああ、母さんは昨日、木に登ったのよ」